SSバイクについて考えた事

先日、車検検査を受けに練馬自動車登録事務所まで行った時の事。

車種は初年度登録から初めての車検を迎えたヤマハYZF-R6だ。R1は何度も試乗している車種なので、R6はその弟分だから問題ないだろうと特別な緊張感も無かった。しかし、バイクを跨いですぐにシート高が高いのに驚いた。身長170cm弱の俺は、つま先が届かない。ハンドルを握るとかなりの前傾姿勢だ。環八を5分も走るとエンジンとマフラーの熱で足が暑くて火傷するのではと心配になった。初夏の今でもこんなに暑いのに真夏の気温が30度を超えたら都内の渋滞でこのバイクに乗れるのだろうか…

車検検査を合格して店への帰り道、メーター内の黄色の警告灯が点灯しているのに気づいた。色々調べてみると車検場のスピードメーター検査機にかけた時、スピードメーターに繋がっている後輪をローラーにのせて測定するのだが、前輪は固定されているために前輪と後輪の回転数が大きく違ってしまい、車体の異常を表す警告灯が点くようである。知り合いのYSPでコンピューターによるエラー解除をしてもらった。多くのメカニックが働いている作業場でYZF-R6のインプレッションを聞いてみた。
「このポジションキツイですよ。」
「R1よりもさらにきついですね。多分ヤマハ車の中で一番厳しい前傾姿勢だと思います。」
やっぱりそうなんだ。

俺は決してこの車種の悪口を言っているのではない。得意分野ではとてつもない魅力を表現するのは知っている。サーキット走行や高速走行などでは無敵だろう。このR6のオーナーは、オフロードもオンロードも複数のバイクを持っている。きついポジションは分かっていたが一度こういうSSを経験してみようと思ったそうだ。しかし、何も知らずにファーストバイクがSS(スーパースポーツ)だったりしたらどうだろう。例えれば、免許取り立ての主婦がスーパーに買い物に行く車にフェラーリやランボルギーニを勧められるようなものではないだろうか。窮屈なポジション、足が火傷するような熱さ、常に100度を超えて回り続けるファンモーター、やっとつま先でバレリーナのようにして止まらなければならない信号など。お金をためて免許を取って、そんな高いハードルを越えてバイクの世界に入ってしまうことで、バイクが楽しいと思ってもらえるのだろうか。車検場と店との間を往復しただけなのに、俺はこのR6体験を通していろんなことを考えさせられた。

真っ直ぐ前を見てバイクを運転している男、タンデムシートでキャリアの荷物を背もたれに、ふんぞり返って美味そうにジュースを飲んでいる女。俺はそんな気楽なバイク乗りたちを見ていると楽しくなる。言い換えれば、そんな景色に憧れてバイクの世界に入った。今や自動車、二輪車が電気に変わろうしている端境期、これからバイクの世界に魅力を感じて入ってくる若者は何に興味を持って入ってくるのだろう。俺は、あまりに長くこの業界にいたせいか、今の若者にとって魅力のあるバイクとはどんなバイクなのかさえ分からなくなってしまった気がする。

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