「おっとびっくり」、切れてたカムチェーン

交差点でエンストしたきり再始動しないというスズキの400ccアメリカンが最近入庫した。火花、燃料、電装は点検をしても問題ない。そこでエンジン本体の問題かもとV型二気筒エンジンの圧縮を計ったところ、前シリンダーは11㎏/cm2で問題なし。後ろシリンダーは・・・・・あれ?何度計ってもゼロだ。

間違いなくエンジンに大きなダメージがあるはずである。バルブが曲がってしまったとか、ピストンに穴が開いてしまったとか、ピストンリングが折れてしまったとか、シリンダーに修正不能の大きな傷がついてしまったとか・・・どれも深刻なダメージである。

この車種はドライブチェーン駆動ではなくシャフトドライブ。シリンダーを外すのにエンジン本体をフレームから降ろさなければならない。フレームが邪魔してシリンダーヘッドが外せないからだ。

概算修理金額を承知してもらったので、エンジンをバラすことになった。

V型二気筒400ccのエンジンを降ろすのに、スタッフに助けてもらって3人がかりだ。自慢じゃないが、二十歳のころはCB750K0のエンジンを一人で持てた。近くで見ていた人が驚いて「危ない危ない、降ろせ降ろせ降ろせ。」と焦って絶叫したくらい力持ちだった。今は400ccを3人がかりでヒィヒィ言っている。

故障個所は、すぐに分った。ヘッドカバーを外して、クランクシャフトを回したらカムシャフトが回っていない。カムチェーンが切れていてカムスプロケットも割れていたのである。

レーサーなどでは、ハイパワーに耐えきれずにカムチェーンが切れることはあるが、街乗りの、しかも回転を上げずに使用しているアメリカン車両で起こることは想定外。おっとびっくり、50年この仕事をしているが、こんなのは初めてである。

ここから先しばらくは、メカに興味のない人には退屈な文章になってしまうが、カムチェーンの役割を説明しておこう。

クランクシャフトはエンジンの中心部品である。この部品の回転が二輪、四輪を動かすパワーの源である。クランクシャフトにはスプロケットが付いている。

エンジンには、燃料を吸引するバルブと、排気するバルブがついているが、それらを閉じたり開けたりするのがカムシャフトである。エキセントリックな形でインレットバルブとエキゾーストバルブの開け閉めを行う。カムシャフトにもスプロケットがついている。歯数はクランクシャフトの2倍である。このふたつのスプロケットを繋いでいるのがカムチェーンである。クランクシャフトが1回転するとカムシャフトが半回転する。

この肝心要のカムチェーンが切れてしまったから、エンジンが止まったのである。

切れてしまったのにはいくつか原因はあるのだが、一番の原因はドロドロ真っ黒なエンジンオイル。定期的に交換しておけば、ここまでの故障にはならなかったと思われる。カムチェーンの異音もあっただろうが、テンショナーの調整なども必要であったのだろう。

3,000㎞毎のエンジンオイル交換は、特に高回転で回るバイクのエンジンにとって大切。オイル交換さえマメにしておけば、今のエンジンは壊れ難いはずだ。至極簡単な事だけど、うっかり忘れてしまう。「おっとうっかり」が「おっとびっくり」にならないように、御注意!

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